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箱男
『箱男』安部公房 読了。

息を呑む文章の美しさ。絡みつくように濃厚な視線。

さすがです、安部公房。描写がやはり秀逸。
繊細でいて毒がある。粘り着くようでいて美しい。不思議な魅力があるんです。何だろうこれは。
特に魚になる夢、の話は表現が新鮮で興味深いです。

 関節という関節が、それぞれ分担していた筋肉や組織の重さを、なつかしがりはじめる。むしょうに歩きたいと思う。それから、ふと、歩こうにも肝心の足がないことに気付いて愕然とする。
 そう言えば、無いのは、なにも足ばかりではなかった。ほら、耳もない、首もない、肩もない……それに何より、腕がない。このたとえようもない欠乏感。


まるで自分が本当に魚になった夢をみてしまったような錯覚。
文章を追うだけなのに、それによって気持ちが妙に急くような感覚になる。「本を読んでいる」人間に影響を及ぼすのはなかなかできるものではないです。

『箱男』は文字通り箱に魅了されてしまった、幾人(たぶん)かの男の話。
これがまた、自分もその場に居合わせて、箱男と一緒になって段ボールから覗いているような視線で読める。
生々しいまでのリアルがあるのです。
そして人が目を逸らしたい深層心理というか、見ないようにしているところにわざわざ視点を合わせる。

 誰だって、見られるよりは、見たいのだ。ラジオやテレビなどという覗き道具が、際限もなく売れつづけているのも、人類の九十九パーセントが、自分の醜さを自覚していることのいい証拠だろう。

ラジオやテレビが覗き道具。この考えがまたすごい。みんな「覗き屋」ですか。
ただ、後半に贋箱男や贋医者など、様々な箱男が出てきてちょっと混乱しました。それが難しかったなという印象。
けれど『砂の女』ほどどうしようもない絶望を感じる読後感ではないですが、これもまた面白い一作。
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