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変身
高橋 義孝,カフカ
新潮社
(1952-07-30)
『変身』カフカ 読了。

ある日、起きると虫になっていた。
という有名にもほどがある作品。これ、所々で笑ってしまいました。

ことに天昇にへばりついているのは気持ちがよかった。床の上に這いつくばっているのとはよほど趣がちがう。(中略)グレーゴルは天井にへばりついていて、ほとんど幸福と言ってもいいほどの放心状態におちいり、不覚にも足を離して床の上へばたんと落ちて、われながらそれに驚くこともよくあった。

想像して笑わずにはいられません。
何が可笑しいって、「何か気がかりな夢」から目を覚ますと虫になっていたグレーゴル。
彼は取り乱すわけでもなく、虫としての自分をすんなり受け入れている。これは家族にも言えることで、妹や父、母は彼の姿を嘆きはするけれど、どうして彼が虫になってしまったのか?という根本的なところは全く疑問に思っていないのです。
それのせいかやけに「虫になる」ということが軽いことに感じられて、全体的にギャグっぽい冗談な空気が漂っているわけです。
特に父親が真剣になってリンゴを彼に投げつけるところとか。リンゴが身体に埋まったまま生活する彼を想像するともう駄目です。面白すぎる。

けれど、「えっ……」と思ってしまうほど、あっさりと物語は終わる。
最後は爽やかに描かれていますが、その背景に漂う虚しさと切なさはどうしようもないです。
| | 17:59 | - | - |
ドミノ
『ドミノ』恩田陸 読了。

痛快!周りを巻き込んで駆け抜ける、ジェットコースターのような一作。

実に楽しませていただきました。
三十人近い登場人物がそれぞれ役割を持ち、東京駅を中心に絡み合い終わりに向けて収束していく。
表紙裏あらすじに書いてあるように、愉快な「パニックコメディ」です。
どこかの誰かが締め切りに追われている。どこかの誰かは上京して初のオフ会。はたまたどこかの誰かはオーディション会場に。どこかの誰かは……。
と、全く関わりのないところでハプニングが起こり、みんな必死になったり困ったりしている。
そして些細なところでその線が重なり合い、絡み合い、また新たな事件を呼ぶ。
まさしく『ドミノ』。
本当に、笑った。三十人近い登場人物がいるにも関わらず、個性は強いし混乱させない。
これは作者の力量が発揮されているとしかいいようのない素晴らしさですね。

恩田作品は初めてですが、どうやらこれは異色の作品のよう。
他の有名作品も読んでみたいところです。
| | 23:36 | - | - |
箱男
『箱男』安部公房 読了。

息を呑む文章の美しさ。絡みつくように濃厚な視線。

さすがです、安部公房。描写がやはり秀逸。
繊細でいて毒がある。粘り着くようでいて美しい。不思議な魅力があるんです。何だろうこれは。
特に魚になる夢、の話は表現が新鮮で興味深いです。

 関節という関節が、それぞれ分担していた筋肉や組織の重さを、なつかしがりはじめる。むしょうに歩きたいと思う。それから、ふと、歩こうにも肝心の足がないことに気付いて愕然とする。
 そう言えば、無いのは、なにも足ばかりではなかった。ほら、耳もない、首もない、肩もない……それに何より、腕がない。このたとえようもない欠乏感。


まるで自分が本当に魚になった夢をみてしまったような錯覚。
文章を追うだけなのに、それによって気持ちが妙に急くような感覚になる。「本を読んでいる」人間に影響を及ぼすのはなかなかできるものではないです。

『箱男』は文字通り箱に魅了されてしまった、幾人(たぶん)かの男の話。
これがまた、自分もその場に居合わせて、箱男と一緒になって段ボールから覗いているような視線で読める。
生々しいまでのリアルがあるのです。
そして人が目を逸らしたい深層心理というか、見ないようにしているところにわざわざ視点を合わせる。

 誰だって、見られるよりは、見たいのだ。ラジオやテレビなどという覗き道具が、際限もなく売れつづけているのも、人類の九十九パーセントが、自分の醜さを自覚していることのいい証拠だろう。

ラジオやテレビが覗き道具。この考えがまたすごい。みんな「覗き屋」ですか。
ただ、後半に贋箱男や贋医者など、様々な箱男が出てきてちょっと混乱しました。それが難しかったなという印象。
けれど『砂の女』ほどどうしようもない絶望を感じる読後感ではないですが、これもまた面白い一作。
| | 08:37 | - | - |
不気味で素朴な囲われた世界
『不気味で素朴な囲われた世界』西尾維新 読了。

初の西尾作品。うーん、成る程。
『きみとぼくの壊れた世界』という作品と世界観を同じとする話らしいです。
けれど続編というわけでもなく、初めて読んでも全く違和感はありませんでした。
何というか。言葉遊びが面白いなあ、と思わされた。
類義語対義語の使い方とか。何気ない会話のボケとツッコミとか。
あとノリとテンポがよい。どの登場人物も「本気でそれ、言ってるのか?」と阿呆らしいけど疑問に思ってしまうくらい、真面目かつ軽快におかしなことを述べる。
キャラはまあ、立っていたし興味深い。ただ個人的にはいまいち愛着がわかなかったなあ、という印象。
そして本格ミステリらしいですが……、ううむ。
特にミステリを好んで読むわけでもなく詳しいわけでもないですが、ミステリはこの話の中でひとつの要素としてしか描かれていない気が。誰が犯人なのかトリックは何か、という謎解きのわくわく感を楽しむものではないかと。
むしろミステリは味付けとしての役割で、主役は先程述べた言葉遊びやノリの部分の気もします。そしてキャラたちを取り巻く世界と。
ミステリとして楽しむ話ではないですが、彼らの世界と世界観を見るには面白い話。
| | 15:31 | - | - |
夜は短し歩けよ乙女
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦 読了。

まずタイトルに惹かれた。
しかもやっぱり舞台は京都。おそらく京大生なんだろうなあ。なんて思いつつ。
冒頭は、黒髪乙女に恋する大学生が、彼女とお近づきになろうとがんばるところから始まる。
文章はさらさらとあっさりした中に、古風な雰囲気が漂う。おそらく乙女のせいでしょう。言葉遣いも、言動も、少しズレている彼女。目が離せません。
本当に、乙女が可愛いのです。きゅんとしてしまう(笑)
私もこんな乙女になって、まか不思議な木屋町や先斗町を徘徊してみたいわ、なんて思わされてしまった。
彼女と必死になって仲良くなろうとする彼もとても見物ですが、これは黒髪の彼女の行動を見るためだけに読んでも損はない話かと思います。

その周りを固める人たちも、なんとも不思議で愉快で面白い。
謎の高利貸し、李白さん。職業は天狗という樋口さん。宴会に忍び込みタダ酒を鯨飲する羽貫さん。などなど。
現実にはいないと思いながらも、京都の小道をそっと抜けたら本当に出てきそう、なんて感じてしまう魅力的な人物ばかりなのです。
物語は全体的に日常に少しの非日常、ファンタジーを混ぜたような不思議な展開になってます。
このバランスが絶妙。日常から離れすぎず、ファンタジーに近付きすぎず。
好奇心旺盛な黒髪乙女と、彼女を追ってしまうがために珍事に巻き込まれる彼。
非常に楽しませて頂きました。
| | 11:42 | - | - |
陽気なギャングが地球を回す
『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎 読了。

またもや伊坂作品。ノンストップ(笑)
これもかなり面白かったです。本当にどうしてこんなにキャラが立つのか。
どんな嘘も見抜く成瀬。演説の腕はピカイチの響野。スリのプロ、久遠。正確な体内時計を持つ雪子。
誰も個性があって、愛着のわいてしまうキャラクターばかり。
話の流れも、銀行強盗をやり遂げたはずが次から次へと問題が降りかかってきて、ぐいぐい引っぱられるようになってるのです。飽きさせない。
それに「これ話に関係ないけど、絶対伏線になってくるだろうなあ」と思ってたものが、見事に利いてくる。特に後半、最後の方の流れはニヤニヤせずにはいられないんですよね。
なんというか、ニクイ。
「これでもか!」っていうくらい、畳みかけがくるのが痛快。まさしく、陽気なギャングたちなのです。
| | 17:28 | - | - |
赤×ピンク
『赤×ピンク』桜庭一樹 読了。

桜庭さんの初期の作品、かな。
元々ラノベらしいですが、綺麗な装丁で角川から新しく出たみたいです。
女の子たちが、毎夜ショーとしてバトルする話。三部作になっていて、それぞれ視点の女の子が変わる。
さらっと読めてしまいました。読みやすすぎるだろうと思うくらい。
廃校で夜になると、女の子たちがバトルしてお金をもらう。という何とも非日常的なストーリーの割に、不思議とするりと入り込める。きっと女の子たちが「こんな女の子はいないだろう」と思う中で、やっぱり考えることやちょっとした言動は「女の子」だからでしょうか。
いそうにないけど、探せばいる、かな。と思わせる、女の子たちが魅力的。
本当に、サラリと読めて、サラリと楽しめる話でした。
| | 17:19 | - | - |
オーデュボンの祈り
『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎 読了。

伊坂氏のデビュー作。
コンビニ強盗に失敗して逃げていた伊藤は、気づけば知らない島に。
その島はずっと昔から外と交流を絶っているとか、妙な住人がいるとか、なんと喋るカカシまでいるとか。
一見ファンタジーな、不思議な話でした。
他作品(といってもそんなに読んでいるわけではないのですが)と比べると溜め息ものの美しい構成力と秀逸な伏線は際立ってはいませんが、その分内容が濃いというか、技巧より物語そのものに惹かれました。
しかし、相変わらず登場人物たちは魅力的。
特にカカシの優午と、連れてこられた伊藤を勝手に案内する日比野はよい。好き。
そして「オーデュボンの祈り」というタイトルも、納得させられる話の流れ。
何よりも「この島には欠けているものがある」という言い伝えがちらほらと登場するんですが、その「欠けているもの」が最後に明かされる。
それがもう、ニヤリとさせられるのですよ。なるほどこれを持ってくるか、と。
| | 20:02 | - | - |
13ヵ月と13週と13日と満月の夜
『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』アレックス・シアラー 読了。

本の中に飛び込んだような。
主人公と一緒になってはらはらさせられたり、怖くなったり、怒ってしまったりする話でした。
日常に少しのファンタジーが混ざったような、女の子と魔女の物語なんですが。
もうこの魔女が、本当にいやあぁな奴なんです(笑)
いっそ清々しいくらい意地悪で性格が極悪。まさに「悪役」にふさわしい。
それの効果もあってか、必死になって主人公を応援してしまったし、同じように怒ったり悲しんだりしてしまった。
これ、子供の心情がすごくよく伝わってくるのもひとつの理由だと思います。
本当に描写が「小学生の女の子」なんですよ。思ってることもやることも言うことも。とても大人が書いたとは思えないうまさ。
まるで自分が子供に戻ったようにわくわくしてしまいました。
また、家族との場面も見物。歯がゆいときも切ないときも幸せなときもある。
とても心躍らされて、最後は清々しく幸せになれる話でした。
| | 14:09 | - | - |
人間失格
『人間失格』太宰治 読了。

今更な作品をもうひとつ。
これ、中学生のとき読書感想文で書こうとして挫折して、高校でも確か挫折した覚えのある作品。
どうしても最初でつまずいて、「面白くない」と投げ出していました。
けれど、今になって読んでみるとするすると読めてしまいました。不思議です。
感想は難しい。主人公の考え方にもやもやさせられたり、周りの評価にニヤリとさせられたり、また友人との会話にはっとさせられたり。
静かな文章にひそむちょっとした冗談の違和感だとか、主人公の言動だとか。魅力を感じました。
面白さ。戸惑い。憂鬱。ユーモア。諦め。何をとっても当てはまらないし、でも当てはまる気もする。
個人的には罪の対義語についての話がされていたところが面白かったです。
| | 19:18 | - | - |